最近、マスターが家を空けることが多く。二人の時間が少なくなってきている。 倦怠期だろうか? 浮気? そんな言葉が頭をよぎるくらい哀しい。 もっと二人で寄り添っていたい。 もっと会話を楽しみたい。 もっと触れ合っていたい。 ささやかな欲求が満たされない毎日が続く。 寂しい……。 そう、私は寂しいのだ。 マスターが私から離れていくことが たまらなく寂しくて、辛くて、哀しくて……。 そんなマスターが何をしているのかというと、私の姉妹のところへ足繁く通っている。 真珠、爆、鉄鉱石、先日はアメジストと月長石のところへ行っていたようだ。 時々、お酒を呑んで帰ってくるときもある。 機嫌は悪くなく、私に対しても以前と同じ態度で接してくる。 『何をしているの?』 マスターに聞いてみたいけれど、怖くて聞けない私……。 変なところで臆病だ。 姉妹に聞いても、いつも はぐらかされてお仕舞い。 私の不満と不安は募るばかり。 マスター、マスター、マスター。  貴方を想うと幸せで満たされたのに、最近は寂しさで壊れてしまいそうですよ。 最近、ペリドットの笑顔が曇ってきている。 僕が家を空けることが多くなっているからだろう。 思えば、以前より会話も触合いも減ったかな。 彼女の思いは理解できるが、僕にとっても今が正念場だ。 申し訳ないが、彼女にはもう少し我慢してもらおう。 今を乗り越えれば、きっと彼女も喜んでくれる。 その自信がある。 実は思うところがあって、彼女の姉妹の下を訪れている。 相談と説得と根回し。 なかには予想通りの難物もいて苦労している。 真珠さんと爆さんは手放しで喜んでくれた。 鉄鉱石は反対を口にしたが、必死になって口説き落としたところ最期には賛成をしてくれた。 そこまでの想いがあるのならと、最期の難物を口説きに行く際に同行もしてくれた。 もしかしたら、一番の味方になってくれたのかも知れなかった。 アメジストは何も言わない。 言わない代わりに氷のような沈黙と蔑みの視線をくれる。 明らかな反対の意思表示だ。 鉄鉱石の援護射撃も功を奏さない。 傍に侍る月長石ですら怯えるくらいだ。 それでも、門前払いをしないところがアメジストの不思議なところだ。 真珠さんと鉄鉱石からヒトと宝石乙女の昔話は聞かされている。 宝石乙女が胸に秘めた願いも教えてもらった。 アメジストは現実を目の当たりにして、不幸と幸福の狭間を生きてきた乙女。 クールに見えて姉妹を想う情愛は誰よりも強い。 いまの態度も、そのせいだろうと教えてくれた。 いつもは快活でお茶目の5乗くらい元気な月長石が プレッシャーに打ちのめされる僕を慰めてくれる。 くそっ、こんなんで落ち込んでいられるか。 僕は彼女と……彼女と……。